
台風や豪雨のあと、整備工場や販売店には「水に浸かった車が動くか見てほしい」という相談が増えます。浸水した車は見た目に問題がなくても、電気系統のショートで火災が起きるおそれがあり、最初の対応を間違えると被害が広がります。
このページでは、国土交通省・日本自動車工業会・日本損害保険協会・自動車公正取引協議会の公式情報をもとに、冠水・水没した車の扱いをまとめました。お客様への最初の案内と、中古車として扱うときのルールの両方を載せています。
冠水車の公式情報
- 国土交通省|浸水・冠水被害を受けた車両のユーザーの方へエンジンをかけない・HV/EVの注意
- 国土交通省|水深が床面を超えたら、もう危険!メーカー8社への調査結果
- 日本損害保険協会|自然災害と損害保険車両保険で補償される範囲
浸水した車にまずすること(国土交通省)
- 自分でエンジンをかけない(感電事故や電気系統のショートによる車両火災のおそれ)
- 使いたい場合は、販売店か最寄りの整備工場に相談する。ハイブリッド車・EVは高電圧のバッテリーを積んでいるので、むやみに触らない
- 使うまでの間は、バッテリーのマイナス側のターミナルを外す。外したターミナルがバッテリーに触れないよう、テープで覆うなどの措置をする
水が引いて動きそうに見えても、浸水した車は運転できる状態でも整備工場などで点検整備を受けるよう、国土交通省は呼びかけています。
どのくらいの水深で危なくなるか
| 水深の目安 | 起こること(国土交通省・メーカー8社への調査) |
|---|---|
| 床面を超える | 電気装置の故障やマフラーからの浸水で、エンジン・モーターが止まるおそれ |
| ドアの下端にかかる | 内側からドアを開けにくくなる |
| ドアの高さの半分を超える | ドアがほぼ開けられなくなる |
日本自動車工業会も、冠水路には安易に入らず、動けなくなったら早めに脱出するよう呼びかけています。お客様には「床まで水が来たら走らない」と伝えると分かりやすくなります。
整備工場での受け入れと点検
| 段階 | 確認すること |
|---|---|
| 受付 | 浸水した高さ(床・シート・ダッシュボード)、海水か淡水か、浸水後にエンジンをかけたか、ハイブリッド車・EVか |
| 移動 | 自走させない。積載車で運ぶ。マイナスターミナルが外れているか |
| 点検 | 電装品・ハーネスのコネクタ、エンジン・トランスミッション内部への浸水、室内の泥・臭い、高電圧系(HV・EVはメーカーの手順に従う) |
| 見積 | 車両保険の有無を確認し、保険会社への連絡を案内する |
車両保険で補償されるか
日本損害保険協会によると、任意保険で車両保険を付けていれば、台風や洪水などの風水災で受けた損害に保険金が支払われます。ただし、契約のタイプによって補償範囲が限られている場合があります。
地震・噴火・津波による損害は対象外です(一部の保険会社は一定の条件で一定額を支払っています)。自賠責保険は車両の損害を補償しません。
中古車として扱うときの表示義務
自動車公正取引協議会が運用する自動車公正競争規約の中古車の施行規則第14条第7号で、「冠水車であるにもかかわらず、その旨を表示しないこと等により、冠水車でないかのように誤認されるおそれのある表示」が不当表示として禁止されています。
公取協は2020年12月の注意喚起で、虚偽の表示だけでなく表示・説明しないことも不当表示になり景品表示法上も問題になると説明し、「表示・説明する義務はない」という情報は誤りだとしています。2021年9月には、オートオークションで冠水車と判定された車を「冠水車」と表示せずに中古車情報サイトへ載せた会員に警告を出しています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 冠水車の定義 | 集中豪雨や洪水などで室内フロア以上に浸水したもの、またはその痕跡により商品価値の下落が見込まれるもの(公取協の資料が引用する日本自動車査定協会の基準) |
| 業者間取引 | オートオークションでもおおむね同じ基準で、冠水車はその旨を表示して取引する |
| 公取協の見解 | 冠水車は中古車として消費者に販売するには適さない |
下取りや買取で預かった車に浸水の痕跡がある場合は、販売する前に冠水車に当たるかを判断し、当たる場合は表示と説明をします。業者オークションに出品するときも、冠水の申告が前提です。オークションでの売却については、ASNETの入会案内サイトで解説しています。
ASNETは入会金・月会費0円で、全国の業者オートオークションに社内のパソコンから出品・入札できる中古車流通サービスです(入会は古物商許可を持つ事業者が対象)。
お客様への案内文の例
災害のあとに店頭や電話で案内するときは、国土交通省の呼びかけをそのまま使うと誤解がありません。
- 浸水した車は、見た目に問題がなくてもエンジンをかけないでください
- ハイブリッド車・電気自動車は高電圧の部品があるので触らないでください
- 可能であれば、バッテリーのマイナス端子を外してテープで覆ってください
- 車両保険に入っている場合は、保険会社に連絡してください
- 引き取りは積載車で伺います
冠水車・水没車のポイント(まとめ)
台風や豪雨で浸水した車は、外観に問題がなくても感電事故や電気系統のショートによる車両火災のおそれがあるため、自分でエンジンをかけず、販売店か整備工場に相談するよう国土交通省は呼びかけています。ハイブリッド車・EVは高電圧のバッテリーがあるので触らず、使うまではバッテリーのマイナス端子を外して覆っておきます。水深が床面を超えるとエンジンやモーターが止まるおそれがあります。風水災の損害は車両保険で補償されますが、地震・噴火・津波は対象外です。中古車として売る場合、室内フロア以上に浸水した冠水車はその旨を表示しなければならず、表示しないことは自動車公正競争規約の不当表示に当たります。
冠水車・水没車に関するよくある質問
水に浸かった車のエンジンをかけてもいいですか。
かけないでください。国土交通省は、外観上問題がなさそうでも感電事故や電気系統のショートによる車両火災のおそれがあるとして、自分でエンジンをかけず、販売店か整備工場に相談するよう呼びかけています。
どのくらいの水深から危ないのですか。
国土交通省が国内乗用車メーカー8社に調べた結果では、水深が床面を超えると電気装置の故障やマフラーからの浸水でエンジン・モーターが止まるおそれがあります。ドアの下端にかかると内側から開けにくくなり、ドアの高さの半分を超えるとほぼ開けられなくなります。
ハイブリッド車やEVの場合は。
高電圧のバッテリーを積んでいるため、むやみに触らず、販売店や整備工場に相談してください。使うまでの間は、バッテリーのマイナス側のターミナルを外し、テープで覆うなどの措置をします。
水害は保険で補償されますか。
任意保険の車両保険に入っていれば、台風や洪水などの風水災による損害は補償されます(日本損害保険協会)。契約のタイプによって補償範囲が限られる場合があり、地震・噴火・津波による損害は対象外です。
冠水車を中古車として売るときに表示は必要ですか。
必要です。自動車公正競争規約の中古車の施行規則第14条第7号で、冠水車であるのにその旨を表示しないことなどで冠水車でないかのように誤認させる表示は不当表示とされています。「表示する義務はない」という情報は誤りです。
どこまで水に浸かったら冠水車ですか。
公正取引協議会の資料が引用する日本自動車査定協会の基準では、集中豪雨や洪水などで室内フロア以上に浸水したもの、またはその痕跡により商品価値の下落が見込まれるものを冠水車としています。
登録手続きの書類や期限を、整備・販売の業務の中で管理するには?
名義変更や住所変更、抹消の期限は「15日以内」が多く、入庫や納車の予定と一緒に管理すると漏れが減ります。顧客と車両の情報、車検証の記録、見積・請求を1か所で扱えるのが自動車整備システム(自動車整備ソフト)や車両販売システム(車販ソフト)です。整備システム 比較や整備ソフト おすすめの情報を見るときは、整備ソフト 安いかどうかに加えて、整備システム リースなしで導入できるか、電子車検証の読み取りに対応しているかを確認してください。
出典
このページは次の一次情報をもとに作成しています(2026年10月4日確認)。
- 国土交通省 浸水・冠水被害を受けた車両のユーザーの方へ:https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_fr09_000100.html
- 国土交通省 水深が床面を超えたら、もう危険!:https://www.mlit.go.jp/jidosha/carinf/rcl/carsafety_sub/carsafety033.html
- 日本自動車工業会 冠水路の走行:https://www.jama.or.jp/library/carlife/15/
- 日本損害保険協会 自然災害と損害保険:https://www.sonpo.or.jp/insurance/shizen/index.html
- 日本損害保険協会 そんがいほけん相談室Q&A:https://soudanguide.sonpo.or.jp/car/q015.html
- 自動車公正取引協議会 自動車公正競争規約集(PDF):https://www.aftc.or.jp/content/files/am/kiyaku/HP_kiyaku_202304.pdf
- 自動車公正取引協議会 注意喚起(2020年12月4日・PDF):https://www.aftc.or.jp/content/files/pdf/aftc_info/aftcinfo_20201204.pdf
- 自動車公正取引協議会 警告事例(2021年9月3日・PDF):https://www.aftc.or.jp/content/files/pdf/aftc_info/aftcinfo_20210903.pdf






